イントロダクション
マクロビオティックについての知識を得る
この講座はマクロビオティックについて学び、マクロビオティックコンサルタントになるための手助けとなるものです。
まず皆様が思う事は「マクロビオティックってなに?」という疑問でしょう。簡単に言うとマクロビオティックとは、玄米や穀物類を中心に調理される食生活法・食事療法のことです。
この資格を勉強・取得すれば、ただ資格を得るという結果だけでなく日々の食事に取り入れてより健康な体を作る事も可能ですし、飲食店など食品関連のお仕事をしている方には新メニューの開発や助言に役立てる可能性が大いにあります。
勉強することへの不安
知識を得ようとする際、何かしらの予備知識があるのとないのではモチベーションの差が開いてきます。
たとえば野球のルールを詳しく習う時、少しでもプレイしているところを見た事がある人と名前も初めて聞いたという人では始める時点で差が生まれて来ます。そして習い始めても前者は後者の一歩先を進んでいくでしょう。
なぜこのようなことになるのか? 後者は「全く分からない」状態だからです。
何も知らない状態だとどの知識を得ればいいのか、本当にその知識があっているのかもわかりません。そもそも知らない事に興味を持つのかすらも分からないので、足踏みする人も多くいるでしょう。
ですがここではそんな不安を取り除いて、楽しく学んでいただくことをおすすめします。
何事も楽しんで行った方が習得が早いものですが、それは勉強に対しても言える事です。このカリキュラムでは、皆さんが楽しみながらマクロビオティックの知識を学んでいただけるテキストとなっていますが、所々難しくてわかりにくいところもあるでしょう。
そんなときには、皆さんが大好きで楽しいことをしてみましょう。
そう、実際にマクロビオティックの食事を食べてみることです。
上記の野球の例でも、野球のルールを学んだらすぐに実際に野球を行ったり見たりすると、より楽しく理解できるようになりますよね。
本講座で学んだ知識を確認しながら、マクロビオティックのお店に訪れてみてはいかがでしょうか。
食材はどうやって手に入れる?
「マクロビオティックって難しそう..」
「マクロビオティックに使われる食材なんてそうそう手に入らないのでは?」と不安に思う方もいらっしゃると思いますが、安心してください。
普段耳にしない言葉だというだけで、マクロビオティックで基本的に使われる食材は穀物類です。玄米や米・小麦などと言った私たちが普段主食として摂取する食材を中心として献立を作るので、いつもの食事に取り入れる事は比較的簡単です。
マクロビオティックコンサルタント資格取得講座とは
マクロビオティックの知識を得たい
栄養学の勉強をしているが、より知識を深めたい
健康な食事で健康な体を作りたい etc.
などなど、食に興味がある方なら必ず楽しんでいただける内容になっています。
日々を健康に過ごし、より良い生活を送るためにも
マクロビオティックコンサルタントとしてしっかり学んで行きましょう!
Lesson1 マクロビオティックとは何か?
マクロビオティックとは
これからマクロビオティックのについて学習を進めていきますが、そもそもこの「マクロビオティック」という言葉を初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。まずはマクロビオティックの基礎知識から学んでいきましょう。
マクロビオティックとは穀物類を中心に献立された食事法であり、東洋で育まれた哲学や医学の応用系になります。
ちなみにマクロビオティックの語源はギリシャ語から由来しており、
macro:大きな、包括的な、無辺の
bio:生命の、生き生きした
biotic:生活法、若返り術
という意味を持っています。直訳すると「包括的な生活法」となり、意訳すると「自然という大きな概念に身をゆだねた生活法」となります。
東洋医学の基本は「日々の生活を健康的に過ごすことが最大の予防となり、病気にかからない体を作る」という概念で成り立っていて、マクロビオティックもその考えに当たります。マクロビオティックの目的は上記の考えを基に作られた食事を取り、日々を健康に過ごして幸福を得る事なのです。
このような概念、考えを持った医療法や生活法は多数存在するでしょう。しかしそれを行う前提条件として、理に適っているか、生活にちゃんと取り入れられることが出来るか、宗教上の問題も考慮できるのかなど多くの問題が立ちふさがります。
また、世の中のマクロビオティックには、桜沢如一氏のオーサワ式や久司道夫氏のクシ式など、元は同じであったものが現在微妙に形を変え、宗派のように別れてしまっているものもあり、これがわかりにくさの一つの要因となっています。
ですがご安心を。
先程申したように、マクロビオティックは哲学や医学の応用系であり、5000年来の歴史を重ねることで上記の問題を解決していき、民間でも実践可能なほどに研究されたものです。しかも万人共通の決められたメニューではなく、その土地の気候や環境、性別、年齢、健康状態などを考慮して細分化されたメニューがたくさんあります。
また本カリキュラムでは、現在のマクロビオティックの宗派などにはとらわれず、本質的に重要であることや現代の生活様式に合わせやすいものを包括的に学べるような内容となっています。
さらに、食事法のみに焦点が当てられることが多いマクロビオティックですが、それと合わせて重要なマクロビオティックの考え方や基本理論、マクロビオティック的な生活様式も合わせて学習していきます。食べることだけでなく、全ての知識が一つとなり実践されることで、より大きなメリットを享受できるでしょう。
なのでこのカリキュラムが終わった頃には皆さんも知識だけでなく、日々の食事に対する考え方も少し変わるマクロビオティックコンサルタントになられていることでしょう。
マクロビオティックの効果と利点
マクロビオティックの大きな効果はやはり体を健康な状態に正すことです。
上記で説明したように、マクロビオティック自体は古代から存在していて私達の生活を陰ながら支えてくれていました。
それならば、なぜ今になって耳にするようになったのでしょうか?
それは国や地域によって差は出て来ますが、世界的に飽食が多く見られ、問題視されるようになったことが理由の一つとして挙げられます。
本来人間も動物の一種なので、その土地にあった食物をその日に必要な分だけ食べるのが最も自然です。
ですが今やスーパーに行けば多くの食材が並び、ジャンクフードが街に溢れ、残った料理は残飯として処理される世の中になっています。別にそれ自体は悪くありません。多くの食材が集まるのは国が豊かな証拠ですし、餓死の恐れもなくなるでしょう。
しかし過食によって体に異常を感じるようになった方々が増加しているのも事実です。
そのような事態を危惧する人々が増える中で、今マクロビオティックの生活法が世界的に注目されるようになりました。
体を健康にしてくれるだけでなく、日常に取り入れやすく毎日続けられる事も大きな利点であり魅力です。
まとめますと、マクロビオティックとは
- 穀物類を中心にして献立された食事法
- 東洋で育まれた哲学や医学の応用系
- 自然という大きな概念に身をゆだねた生活法
など、それぞれの考え方や概念を組み合わせた生活法になります。言葉にすると少し難しく感じるかもしれませんが、どれも元々昔から行っていた生活を現代に当てはめた物なので実践することはさほど難しくありません。
今までの生活からは少し変化が必要になるものもありますが、それに見合う健康は非常に価値が大きい物です。
本講座で学習を進めながら、ぜひ実践していきましょう。
Lesson2-1 原則 七つの宇宙の原則
マクロビオティックの原則
レッスン1でも説明したように、マクロビオティックは穀物類を中心とした食事法として広く知れ渡っています。しかし、実はマクロビオティックの考え方は食のみに留まるものではないのです。
実際にマクロビオティックを行っている人はただ食生活に気を付けるだけでなく、日々の過ごし方にも気を付けています。そして生活の全てを「マクロビオティック」だと感じて過ごしているのです。
なぜそのような考えを持っているのか、そのことをまず理解し、カリキュラムの内容を深く把握していきましょう。
七つの宇宙の原則
まずはマクロビオティックを学ぶ上で重要となる概念・原則や生活法について知っておきましょう。
この生活法は基本的に朝起きて夜寝る、朝昼晩の3食をバランス良く摂取するなど、一般的な生活スタイルを昇華させたものが見本になってきます。これを実行する上で、その日その時期の季節や気候にもあった生活を送る事も重要になります。
しかし、上記のようなその日の天気などを自然の一環としてではなく、もっと広く、大きく捉えて宇宙の原則として考えています。それを項目化したものが次の『七つの宇宙の原則』になります。
『七つの宇宙の原則』
- 全てのものは、ひとつの無限から分かれた
- 全てのものは、変化する
- 対立するものは、全て相補的である
- 同じものはひとつもない
- 表があるものは、裏がある
- 表が大きければ、裏も大きい
- 始まりがあれば、終わりがある
それぞれ一つずつ解説していきましょう。
まずは1番目の項目にある「全てのものは、ひとつの無限から分かれた」とはそのままの意味です。と言っても概念化されて少し分かりづらいので、例を挙げると一つとは宇宙のことを指しています。
宇宙というとてつもなく大きな1つの存在から銀河が生まれ、星が生まれ、生物が生まれるといった形で次々に違うモノが生まれて来ます。この事実を広く捉えると、この世の物は宇宙を形成する一部分だと考えられます。
宗教圏の方にとってはこの無限は神様と考えられている場合もありますので、イメージしやすい物にそれぞれ当てはめてみてください。
次に「全てのものは、変化する」についてですが、これは簡単です。つまりどんなものも成長、消耗するという事です。時間が進む限りこの概念が変わる事はありません。
次の「対立するものは、全て相補的である」に書いてある「相補」とは互いに補い合うという意味です。つまり暑い時に冷たい物を食べる、寒い時に暖かい物を食べるというように、相反する立場の物はそれぞれの個性を引き立て合って共存しているのです。
「同じものはひとつもない」とはまさにその通りで、人間という種族で一括りにしても男女で分かれていますし、そもそも同じ人なんていません。これはどんなものにも言える事で、クローン技術が発達して同一の物が複数あろうとも複数あればそれは別の物なのです。
そして「表があるものは、裏がある」と「表が大きければ、裏も大きい」は硬貨やコインを思い浮かべれば簡単です。知っての通り硬貨には裏と表があり、大きい物になれば自ずと表も裏も大きい面積になります。
このような事象は全ての物事にも当てはまり、私達の生活でも大きな役割を持っています。
例えば、微熱程度の風邪なら冷却用のシートを貼るくらいで済み、高熱が出たら氷枕を使用するという対処法があります。これらはどちらも『熱』に相反する『冷気』をぶつける方法ですが、度合の大きさによって処理の仕方も変わってきます。このように片方が強大になれば、その対になる物も比例して強くなるのです。
最後に「始まりがあれば、終わりがある」についてです。これは誰でも知っている概念でしょう。1日、季節、年、人生など多くの事に言えますが始まったら終わりに向かって進んでいくのが常識であり、宇宙の原則として考えられています。
いきなり宇宙の話が始まって戸惑ったかもしれませんが、マクロビオティックにとって重要な原則となりますので、最初に紹介させていただきました。
『七つの宇宙の原則』という言葉から、あまりにも壮大すぎて、自分とは関係がないように感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、どれも1つ1つ紐解いて行けば、私達が古くから営んできた自然に近い生活であり、いたって『普通』のことだということも感じられたでしょう。マクロビオティックとはこのように目の前にある『自然であること』をより広い視野を持って理解するとわかりやすくなります。
ここでは、自分も大きな宇宙の1部分だという意識を少し持って頂くだけでも構いません。
生活法を真似するだけでもよいのですが、どのような考えを持って生活を送っているのかまで深掘りすると、より理解が深まりますので、ほんの少しでも意識しながら学んでいきましょう。
Lesson2-2 原則 相関性の十二の原則
相関性の十二の原則
マクロビオティックには『七つの宇宙の原則』以外にも、もうひとつの原則が関わってきます。
それが『相関性の十二の原則』です。
『相関性の十二の原則』
- 1つの無限は相補的、対立的傾向である陰と陽の永遠の変化として現れる
- 陰と陽は1つの無限宇宙から行われる永遠の変化から現れる
- 陰は遠心性、陽は求心性を表す
- 形あるものは全て中心が陽を指し、表面は陰を指す
- 陰と陽は互いに引きつけ合う
- 陰と陽は互いに反発し合う
- 陰と陽の組み合わせの割合で異なった現象が現れる
- 陰は陽に、陽は陰に変化していく
- 完全な陰と完全な陽は存在しない
- 中性なものは無く、もしあってもそれは陰と陽の両方を持つ性質である
- 陰同士、陽同士は大きい物が小さい物を引き寄せる
- 上限を超えると陰は陽に、陽は陰に性質を変える
このページではこの原則について説明していきますが、度々書かれている「陰と陽」について簡単に説明させていただきます。
この言葉は『陰陽論』という考えから編み出されたものです。
光と闇、火と水、夏と冬といったように対立する2つをそれぞれ陽と陰に当てはめて、この世の全てを二分化させた考えです。詳しくは今後学ばれるレッスン4で説明いたします。
では当初の原則についての説明に戻りましょう。
①1つの無限は相補的、対立的傾向である陰と陽の永遠の変化として現れる
②陰と陽は1つの無限宇宙から行われる永遠の変化から現れる
1と2の項目は前のページで説明した「全てのものは、ひとつの無限から分かれた」と同じで、無限から生まれたものは全て陰と陽に分かれて生み出されるということです。さらに陰と陽の変化は、巨大な無限を形作る1部分としても考えられています。
③陰は遠心性、陽は求心性を表す
④形あるものは全て中心が陽を指し、表面は陰を指す
3の項目では陰は外側に、陽は内側へと向かう性質を持つことが説明されています。
おしくらまんじゅうを例に挙げてみると内側へ集中した場合に陽性の「温」が現れ、外側に離れると陰性の「冷」の要素が現れます。このような事象は全てに現れるので、原則の1つとして数えられています。4の項目でも同じことが言えます。
⑤陰と陽は互いに引きつけ合う
⑥陰と陽は互いに反発し合う
5と6の項目は『陰陽論』の定義とも言えます。陰と陽は互いに寄り添わないと存在できないのですが、自分の個性を出そうとすると相手も個性を出して互いに反発するのです。
⑦陰と陽の組み合わせの割合で異なった現象が現れる
⑧陰は陽に、陽は陰に変化していく
7と8は季節を例に挙げると分かり易いでしょう。
陽の要素が強くなれば夏になり、陰の要素が強くなれば冬になります。そしてそれが続くことはなく、互いにピークを過ぎれば夏はだんだん涼しく、冬はだんだん暖かくなって陰と陽の変換が行われます。
⑨完全な陰と完全な陽は存在しない
⑩中性なものは無く、もしあってもそれは陰と陽の両方を持つ性質である
9と10ではこの世に唯一無二の物はないということを説明しています。
もしあれば『陰陽論』の定義が崩れ去り、文字通り「この世の物ではないモノ」になるでしょう。中性という表現は多数ありますが、この原則の観点から見ると陰と陽の両方の性質が互いを打ち消し合って、バランスを取っている状態だと考えられています。
⑪陰同士、陽同士は大きい物が小さい物を引き寄せる
11の項目は世の中でもよく見られる光景です。
もしあなたがサッカーについて語りたい場合、サッカーに詳しいグループに加わって談笑するでしょう。「個」の存在が集団を引き入れる事は難しいですし、野球など他の競技について談笑するグループには入らないはずです。それが普通のことであり、すべての事象にも当てはまるのです。
⑫上限を超えると陰は陽に、陽は陰に性質を変える
12は陰と陽が持つ特殊性についての原則になります。
普通なら冷たい物は「冷たい」と感じるだけで終わりますが、度を超えると凍傷が現れて火傷と似た症状が私達を襲います。本来火や熱など陽の効果で見られる火傷が陰の効果で見られる特別な現象こそ12番目の原則に当たるのです。陰陽論ではこれを『転化』と呼びます。
色々難しい言葉が続きましたが、こちらも『七つの宇宙の原則』と同様、自然であることを大きく捉えた考え方です。
陰と陽の対の存在はどんなものにも当てはまるので、イメージしにくい場合は「温かい」と「冷たい」、「高い」「低い」など自分で分かり易いように変えて考えてもよいでしょう。この考えは今後、症状の対策に一役買ってくれますので、しっかりと覚えておくようにしてください。
Lesson3-1 健康の七大条件 その1
健康の七大条件
マクロビオティックの実践で重要となるのが、この『健康の七大条件』です。今の自分の状態や変化を把握するために、こちらを考慮して取り組む必要があります。
1つ1つは基本的な事なのですが、全て組み合わせることで健全な体を手に入れることが出来ますし、診断を行う事で現在の健康状況、マクロビオティックの実践を始めてからどれだけ改善されたかなど、様々な目に見えないことを数値化することが出来ます。
1~3番目の条件は生理学的なものになり各5点ずつ、4~6番目の条件は心理学的なもので各10点ずつ、最後の7番目は最も重要になるので55点を振り分けられ、計100点満点で計算が出来ます。
各項目について、「自分はそのうち何点か」ということを自己診断してみてください。その上で、マクロビオティックを実践しながら定期的にこの条件をチェックすることで、自分が良い方向に向かっているかどうかを確認できるでしょう。
初回の状態で40点以上ならそこそこ健康であると言えますので、まずはそこを目指し合格点の60点になるよう頑張ってみましょう。
ではまず、生理学的な3条件について説明していきます。
① 疲れない
現代社会において「疲れない」と感じる人は、ごく少数かもしれません。実際疲労やストレスが溜まって病院送り、さらに酷い場合には過労死に陥るというニュースは、今や驚かれることもなくなりました。それほどストレスが大きな影響を与えるという事実が一般的になったのです。
なので「病は気から」という言葉が現実味のある言葉だと、皆さんもお判りでしょう。
だからと言って放置するのではなく、分かっているからこそ対処しやすい問題なのではないでしょうか。
その証拠に「ポジティブに過ごす」「趣味を見つける」「定期的に発散する」など、ストレスへの対処法はいくつもあります。マクロビオティックでは挑戦心、向上心を持ってポジティブに生きることを推薦しています。
このような普通のことが、健康への第一歩になるのです。
② ご飯が美味しい
食事はどの生物にも必要な行動ですし、それだけで幸福感が生まれてくる貴重な瞬間です。
食材への感謝、食べる事の幸福感、お腹が膨れる事で得られる満足感など、どれか1つでも感じながら食事を行えば、それだけで気分がポジティブになり体もその気持ちに応えて食べたエネルギーを効率よく体中に回してくれます。
③よく眠る
快食に続いて、快眠も重要になってきます。
仕事や付き合いなど、どうしても睡眠時間が削れてしまう事も少なくないでしょう。もし早く寝たとしても夢を見ていたり、寝言を言っていたりすると浅い睡眠状態なので十分に疲れを取ることが出来ていません。
理想としては22時~2時の時間帯を含めた4~6時間以上の睡眠が望ましいでしょう。現代では、7〜8時間の睡眠が必要という説も有力です。
もしくは決められた就寝時間と睡眠時間で深い眠りが実現できれば、体力の回復が容易に行えるでしょう。
Lesson3-2 健康の七大条件 その2
このページでは『健康の七大条件』の心理学的な条件について説明していきます。
④ 物忘れをしない
年が重なる毎に物忘れが激しくなったり、変わらない日常を事細かに覚える事もなくなって来るでしょう。ですが記憶とは、『自分』を証明、確立させるために重要な要素になります。思い出の品や写真などで記憶を物的証拠に変換することも可能ですが、やはり『自分』を形成させるために1番重要となって来るのは記憶そのものになるのです。
とは言っても、老化を防ぐことは現在の技術では絶対に不可能なこと。一説で老化は「産まれた瞬間から発症する不治の病」だとも言われるほど、私達の手ではどうしようもないものです。
ですが老化とはすなわち、成長が進み過ぎた結果だとも考えられます。そして成長は体だけではなく、記憶力にも有効です。つまり究極的には、記憶力は生涯強化し続けることが可能となるのです。
マクロビオティックでもその考えを目標に、健康的な生活を送ることを心掛けます。
⑤ 愉快でたまらない
こちらは前のページで説明した『疲れない』の項目に類似します。ですが『疲れない』の項目の自発的なポジティブに対し、こちらは受動的なポジティブだと言えます。
簡単に説明すると、『何か』が起こった後のアクションとして『愉快』という感情が生まれるので、受動的なポジティブと表現されます。
- 好きな芸人さんのネタが面白い
- プレゼントをもらえてうれしい
- 好きな人と一緒にいることが楽しい
など、幸福感を得られるだけでも精神が高揚し、それにつられて体の機能も向上していきます。嬉しい時の表現に「体が軽い」「天にも昇る思い」など上昇する例えが多いように、昔から本能的に精神と体機能の上昇が関係していることが分かっていたのです。
マクロビオティックの実践の基本は健康的な食事ですが、このように心理的要因が実は大きく関係しています。愉快に感じるかどうか、日頃から物事に無関心になっていないか確認してみましょう。
⑥ 行動がスマート
こちらの項目で言っている「行動」とは、動きが機敏、というわけではなく行動力や決断力などといった精神的なものを指します。
マクロビオティックで健全な体を手に入れた後、必要となって来るのはそれを律する健全な精神になります。
元々の体質、その人の経験など様々な要因でいろんな形に変化しやすい精神ですが、上記で説明したように精神と体機能は密接な関係を持っています。なので健康な体を目指すうちに、心もつられて健全な精神を鍛え上げるというのが理想です。
しかしそれを最初からできれば苦労がない、と言ってしまえば元も子もありません。
なのでまずは「いつもより5分早く行動する」「マナーを守る」など、基本的な事から始めてみましょう。何か1つでも自分を律するルールがあれば、それだけで行動力に違いが生まれて来ます。そしてそれを継続していくことで、健全な精神形成が期待できます。
Lesson3-3 健康の七大条件 その3
最後に最も重要になって来る条件は次になります。
⑦ 嘘をつかない(正義)
『嘘をつかない』なんて子供の頃に誰でも習う基本的な事ですが、実際それを成し遂げた人はいないのではないでしょうか?
人間誰しもわが身可愛さに嘘をついた事があるでしょう。大人でも嘘をつく時はありますし、精神が未発育の子供ならなおさらそのような経験があったはずです。それは普通のことで、決して恥じる事はありません。
ですが皆さん、嘘をついた時に後ろめたさは感じませんでしたか?
嘘をつくのは、それが「悪いこと」だと自覚しているからこそやってしまうのです。中には善の厚意から嘘をつく場面もあります。ですがやはり、大部分は前者の方になってしまうのです。
そもそも『嘘』という字も『「口」からでる「虚」構の言葉』から成り立っており、昔から嘘とはそのように捉えられてきました。
前のページで記憶はその人の人格を作る重要な要素だと説明したように、嘘の後ろめたさは記憶に残り、その人の人生に大きな影響を与える事となるのです。さらに、明るく前向きな気持ちで生活を送った方が体も軽くなるとも説明しました。つまり後ろめたさ、心に弱みを握っている状態だとその気持ちが重しとなって、体の機能も低下してしまいます。
つまり嘘をつかないということは、これまでの条件をクリアして初めて挑める条件なのです。
過去の嘘を拭い去ることは出来ません。ですが贖罪し、心機一転、心を入れ替えて未来に歩き出すことは出来ます。
嘘をつかず、自分を律し、正の感情で精神と体を鍛え上げることで非の打ち所がない健康を手に入れることが出来ますが、ここまで来ると一種の悟りに達してしまいます。
常人ではこの境地にたどり着くことは困難でしょう。なので『嘘をつかない』という制約ではなく、正しくあろうとする気持ち、『正義』を心に秘めて生活を送ってみましょう。その心構えを持つだけでも、心のブレーキが掛けやすくなるでしょう。
全てを通して
ここまで読んでみて、皆さんは何点取れたでしょうか?
現代では医療科学が進み、数年前まで不治の病だった病気も対処法が生まれていたりする世の中です。もっと効率よく簡単に健康になれる方法はあるかもしれません。
ですが病気の在り様より、心の在り様を変えた方が根本的な解決につながるのです。一時限りの健康ではなく、一生を見据えた健康を求めるのなら、挑戦してみる価値は大いにあります。
これがマクロビオティックにおける『健康から平和に至る道』なのです。
マクロビオティックを生活に取り入れ、少しずつ点数を伸ばして健康な体になりましょう!
Lesson4-1 人体のバランス 陰陽論
陰陽論
マクロビオティックを行う上で、原則の他に知っておいてもらいたい定義があります。それがLesson2-2で少しご紹介した『陰陽論』です。
まず簡単に説明しますと、『陰陽論』とはこの世の全ては陰と陽の2つに分類されるという東洋医学の考え方です。
「なぜマクロビオティックで東洋医学が?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、最初に説明したようにマクロビオティックは東洋で育まれた哲学や医学の応用系です。そのため東洋医学の考えが諸所に組み込まれているのです。
では話を戻して陰陽論について説明していきましょう。
陰と陽の存在
陰と陽とは「対(つい)」になる2つの存在を指します。
例えば夜と昼、冬と夏、女性と男性といった形で対になりつつも、どちらか一方があるからもう一方が存在することが出来る様に支え合っている関係のものです。互いに持ちつ持たれつの関係で円満な状態を示すことから、図のような円形が陰陽論の象徴となったのです。
特殊な反応
基本的には対になる存在が寄り添う事で陰陽が成り立つのですが、それとは別に陰陽の特徴が見られたり変化したりする反応があります。
その1つが『消長』です。
上記で例に挙げた夜と昼、冬と夏も対になりますが、これらは時間の軸を中心に見られる現象です。このように時間が過ぎる事で陰から陽へ、陽から陰へと性質が徐々に変わっていく現象のことを消長と言います。
このように周期的に繰り返される現象は夏至や冬至などといった形でどちらかが頂点に達した時に、自然と行われる現象なのです。
そしてもう1つの特殊な動きは『転化』です。
もし陰か陽の要素が頂点に達しても消長が行われなかった場合、どうなるでしょうか? 答えは陰は陽へと、陽は陰へと性質が真逆になってしまうのです。なぜこのようなことになるのかと言いますと、陰と陽にはそれぞれ許容出来る範囲が決まっているからです。
例えば「お腹が減った」と感じて食事を取ったとします。ここから徐々にお腹を満たして行って満腹になれば少しずつ消化してまた空腹の状態にします。この動きは先程学んだ『消長』と同じです。
しかしここで満腹になっても食べ続けたらどうなるでしょうか? 過食による気分の低下、消化不良、腹痛など、体に害を及ぼすことになってしまいます。このように本来体を癒すために行っていた食事も、度が過ぎれば体を壊す原因になってしまうのです。
世の中には苦行を乗り越えて悟りを開いたり、わざと体を壊して体内の栄養素を摂取する前に排出するやり方などもありますが、マクロビオティックでは御法度です。バランスの良い食事と充実した日々を送る事で健康な体を作り上げる事こそ、マクロビオティックの基本なのです。
その為に陰と陽が自分の体にどれだけ必要なのかを知ることが重要となり、それを理解する為に陰陽論は知っておくべき基本となります。
Lesson4-2 人体のバランス 人体構造
レッスン4-1で陰陽論を説明してきましたが、私達が学ぶマクロビオティックはあくまで人体に関わる事です。自然の現象に身をゆだねる事も必要ですが、それと同時に自分の体をどのように対応させるかも知っておく必要があります。
なのでここでは宇宙の原則などの大きな視野の考えを持ちつつ、目の前の『人』という存在について学びましょう。
人体構造
何十億年もの歴史と進化の果てを得て、現在生態系の頂点に位置するのは人間です。これは人間が『考える』ことを武器に進化し続けた結果だと考える人も多くいると思います。
ですがマクロビオティックでは、人間が最も宇宙の原則に順応した結果だと言われています。
生命の神秘である胎児は、女性が子供を胎内に秘める内側への力と男性が精子を分ける外側への力の両方が組み合わせたことで完成されるのです。それこそ、陰陽論で学んだ対立する物が混ざり合う事で1つの和になる現象そのものです。
この動きに忠実な哺乳類ほど生態系ピラミッドの上位に位置し、卵から孵化したり分裂で数を増やす生物が下位に追いやられるのは自然の摂理という考え方がなされます。
さらに胎児本人も無意識ながら対のエネルギーを集め取っています。母親のつむじから天のエネルギーを、上昇してくる地のエネルギーを子宮から補充して自身のエネルギーへと変換するのです。西洋の宗教などでは聖霊からの加護などと言われていますが、東洋ではこれを『気』と考えております。
ちなみに気には内側と外側へと流れる螺旋状のエネルギーに分かれます。内側へのエネルギーは消化器系や呼吸器系、外側のエネルギーは神経系や骨格の成長へと用いられ、その中央に循環系が位置しています。
この気は体中を巡り、陰と陽の2つのエネルギーが衝突することでより大きなエネルギーが発生します。
その現象が見られる場所は体内に7ヶ所あり、このエネルギー中枢を古代インドでは『チャクラ』もしくは『輪』と呼んでいました。そしてチャクラから分岐する腕や足のエネルギーの流れを『経絡(けいらく)』と呼んでいます。
その7ヶ所はそれぞれ、消化器系、神経系、循環器系、呼吸器系、骨格、生殖器系、体の成長を受け持っていることが現代で解明されています。
人体は現代医学の観点から見るとほぼ解析し尽くされているかと思われていますが、人体は目に見えるものだけでなく目に見えない物も合わさる事で機能し始めます。そしてその見えないエネルギー、電磁波構造を最も自然に形成している生物こそが、私達『人間』なのです。
Lesson4-3 人体のバランス 人体の陰陽
ここまで陰陽論と人体の構図について説明してきました。なのでここではその両方を重ね合わせた『人体の陰陽』について説明していきます。
陰と陽の振り分け
前Lessonで用いられた天と地のエネルギーですが、それらは各々で陽と陰の力を持っています。そしてこれが人体の『気』として扱われている以上、人体にも陽性と陰性が生まれて来ます。
天に近い上半身に位置する『心臓、肺、腎臓、膵臓、脾臓、肝臓』は陽性の力が強く、地面に近い下半身の『小腸、大腸、膀胱、胃、胆のう』は陰性の力が強い臓器となっています。
さらに上下だけでなく、人体の右側は天から、左側は地面からのエネルギーに影響し易い造りになっています。なので乳房や肺、卵巣、睾丸、腎臓など左右一対になっている臓器や部位は左側が比較的小さくなり、右側が多少大きくなる傾向があります。
他にも天は脊髄などの後ろ側、脳や心臓などの中枢機能に影響を与え、地は前へと膨張しやすい呼吸器系や消化器系、皮膚や手足などの外的構造にも影響を与えます。
左右上下でそれぞれの特性が見られると言っても、どちらかに比重が傾いているだけでどの部位も両方の性質を持っています。そのバランスを保つために、両方の性質を均等的に保持している循環器系が体中を巡ってエネルギーの運搬を行っています。
このように私達の体は天と地からのエネルギーに多大な影響を受け、それを体内で調和することで生命を維持できるのです。
食べ物の振り分け
陰陽論で全ての事象は陰と陽に分けられると説明したように、それは生物だけでなく食べ物にもあてはまります。そしてこの性質は人体にも大きな影響を与えるのです。
もし自身の持っている陰性と陽性の『気』だけで体の異常に対応できなくなった場合、病気や肌荒れなどの目に見える形として私達を襲ってきます。
このような時に薬を用いて体内の気を刺激し、体の調子を整えるのが医療としてよく見られる行為です。しかしそれよりも簡単で体に大きな負担を与えない行為こそ、食事なのです。
食事はただ空腹を満たす為だけの行為ではなく、食べ物を消化してその栄養を得る行為なのだと皆さまも承知のはずです。ですがここで吸収するのは栄養だけでなく、食べ物が持つ陰や陽の性質も吸収するのです。
たとえばお腹を冷やして悪化した場合、陰陽論の視点から見ると陰の性質を持った『冷え』と『胃腸』が互いの性質を合わせて強力になり、バランスを崩したと考えられます。その対処法として陽の性質を持った温かい食べ物が扱われます。
このように、食事を用いて治療や予防を行う事は東洋医学において重要な考えになっております。
ここで1つの疑問が生まれます。人間が陰と陽のエネルギーを両方用いてバランスを保とうとしているのに対し、なぜ食べ物の方は陰性や陽性に偏ってしまうのでしょうか?
その答えは人間が環境との「調和」を求めているのに対し、食べ物は環境への「適応」が行われたからです。
その証拠に、陰性と陽性のエネルギーを持つ食べ物が盛んに育まれる環境は次のように振り分けられます。
このような環境で育ち、それぞれ性質を持った食べ物は私達の食生活に大きな影響を与えています。暑い季節になれば涼しい陰性の性質を持った食材を、寒い季節になれば体を温めてくれる陽性の食材を用いて料理するのは古くから用いられてきた至極当たり前の行為でしょう。
それこそ自然な食事であり、マクロビオティックが求める形なのです。
Lesson4-4 人体のバランス まとめ
まとめ
陰陽論自体は『七つの宇宙の原則』と『相関性の十二の原則』を簡易的に捉えた物なので、レッスン2を学んだ皆さまなら理解しやすかったでしょう。
基本的にはこの世の全ての対になる存在がお互いを支え合い、同時に反発し合っているという考えになります。それに加えて時間的に性質が変わる『消長』や限度を超えて性質が変わる『転化』などの特殊な例も把握していただけると、どんどん理解が深まっていきます。
それと東洋医学においてもう1つ重要な考えに当たる『気』は『チャクラ』や『輪』など、それぞれの国や地域によって名称が変わってきますが、『体内を巡るエネルギー』という考えはどこも同じです。
この『陰陽論』と『気』の考えが合わさる事で、臓器の陰と陽、食べ物の陰と陽などの組み合わせが広がり、様々な健康法や対処法などが生まれます。
この考えは医療で役立つともに、一般の家庭医学でも活用できますので、理解を深めて今後紹介される対処法やレシピを参考にして私生活に取り入れてみましょう。